かわりつづける伝統

ある老舗の有名なホテルAに止まったときのこと。建物も素晴らしく、伝統と格式があった。スタッフも丁寧でキビキビしているけれど、堅苦しくて、どこか時が止まっていて、過去の栄光の残り火を見ているようだった。

素晴らしい建築にきちんと手入れをしているので、外装はとても立派。でも入ると、ちょっと寂しさというか辛気臭さを感じてしまったである。家具などもそのままを使っているから欠けているようなところもあったし、お料理もサービスも「昔のままなのかな?」という感じがした。もちろん、変更はされている部分もあるのだろうし、昔のままでも良い部分もあるのだけれど、「ちょっと古くさいな」と感じさせる「昔のまま」はどうなんだろう。伝統ってそのままじゃやっぱりだめなんだな、と思わされる体験だった。

同じような老舗ホテルBは、外は全く印象的ではなかったけれど、入り口に入ったとたん、いや入る前のベルボーイさんの動きから違った。入った途端、ふわーっと幸せになる感じがした。キュインと気持ちが引き締まって、ふわっとこころが開いて、んでもってリラックスできる温かい感じ。建物も制服も基本はクラシックなだけれど、新しいデザインや色が入っていて、とても馴染んでいる。今キラキラしている。スタッフも丁寧でキビキビしているけれど、フレンドリーでキラキラしている。今、輝いている、今を生きている、そんな感じがした。でも、新しいホテルでは感じられない、どーんとした落ち着きと優雅さがあった。昔素晴らしかったホテルなんだ、じゃなくって、昔もこんな風にキラキラしてたんだと思わせてくれるところ。これが伝統なんだなぁ、と思った。

この2つのホテルの大きな違いは、内装と飾っている「花」の量と働いているスタッフの動きと表情だった。伝統ってそのまんまを守っていくことなんじゃない、続くために変わっていくっていうことは、必要なんだなと体感した気がした。